コラム - 院長より

 

Vol.1 2003/05/01

森でありたい。

 初めまして。院長の工藤です。このページでは、日々の中で感じたあれこれを、思いつくままに書いていこうと思います。今回は、初対面のごあいさつを兼ねて、私の目指す医療についてお話しします。といっても、そんな堅い話をする気はありませんので、のんびりお読みください。

 私は、昔日本で大ヒットした海外ドラマ「ベン・ケーシー」や、手塚治虫さんのマンガ「ブラック・ジャック」にあこがれて、脳外科医を目指しました。どちらも人間的で腕の立つ脳外科医の話。とてもかっこよかったんですよ。

 しかし医者になってみると、理想とは裏腹、医療現場の矛盾が、だんだんと目に付いてきたのです。その最たるものが、病気を治しに行ったのに、帰ってくると逆に具合が悪くなることが多い病院の現実です。「3時間待ちの3分診療」と言われるように、受診前に延々と待たされた上に診療が終わっても会計だ薬だとまた待たされる。しかも医師やナース、受付スタッフの対応が機械的で、患者さんにイライラがつのり不快な気持ちになる。病院のシステムにも雰囲気にも大いに問題があると痛感しました。また大きな病院では、人間が何か「パーツの集まり」のように診療される傾向があります。医療の進化は医療の細分化でもあります。それで助かる命もたくさんありますから、一概に悪いとは言へません。けれど、細分化が進むと「脳のことはわかるけど、ほかの部分はわからない」といったことが起きてしまいます。この患者さんの腸はこの医者、心臓はこの医者と、何人もの専門医が治療するけど、ひとりの人間としての患者さん全体を診る医師がいなくなってしまうのです。

 これでいいんだろうか。病気を治すって、ただ「悪い部分」そこだけを治すことなのか。心を含めた人間全体に対して施す医療というものが、本当は必要なのではないか。たとえば病院を出たときに、「ああ、来て良かった。あの先生や看護師さんに会えて、なんだか気持ちが楽になった。病気も軽くなったみたいだ」と思わせてあげられる雰囲気も重要ではないか。そう考えたのが、このクリニックを開くきっかけでした。実際、人間とは不思議なものです。体はどこも悪くなくても、心に不安があると頭が痛くなったりする。そういう人にただ頭痛薬を渡しても、決して治りません。心と体は、ひとつのハーモニーを奏でていますから、片方だけを診てもだめなのです。体を治し、心を癒さないと、健康にはならないんです。

 だからこのクリニックでは、アロマを香らせたりして、患者さんにまず心を落ち着けてもらえるよう心がけています。ここは病院でなく癒しの場、イメージとしては「森」でありたいのです。森に行くと、人は五感全体により癒されます。目に心地よい緑の葉の輝き。体にしみわたるようなかぐわしい香り。泉の水の美味しさ。木々のざわめき。木肌に触れれば、ほのかな温かさを感じます。患者さんの心と身体の奥底から、自ら治ろうとするパワーを引き出す、そんな「森」のような環境をつくりたいと考えています。試行錯誤の連続でしょうが、患者さんに優しい本来の医療に近づけばと願っています。