コラム - 院長より

 

Vol.27 2005/08/15

攻める医療と支える医療

 最近の医療は救急医療、高次先端医療などで、どの面を見ても欧米に引けをとらなくなっています。私の専門とする脳神経外科なども少し勉強を怠ると何のことだかわからなくなるほどの速さの進歩です。

 私の医者としてのデビューは、錦港湾の対岸に桜島を抱く、鹿児島市立病院脳疾患救命救急センターでした。毎日救急車で、脳出血や脳梗塞、頭部外傷の患者さんが運ばれてくるところでした。指導医のもとに一晩で3件のくも膜下出血の手術をしたこともありました。今思うとTVでみるERのような感じでした。イギリスに留学中には、重症パーキンソン病を手術で治すために、中絶胎児の脳の一部をパーキンソン病の患者さんに移植する外科治療に携わっていました。当時、世界でも覇を競っていた英国の移植チームであり、日本では技術的にも倫理的にも不可能な最先端の高次先端医療でした。手術前に救急車で運ばれた患者さんが、この移植手術を受けた翌年には、エディンバラからバーミンガムまでの7時間の道のりを、自分で車を運転して再来受診に来たのには感動しました。

 そして私は今、脳神経外科的にみた医療の水先案内として、医学的なアドバイスや高齢者の在宅医療、心のケア外来にシフトを置いた医療をしています。今まで手術に重きを置いて治療した患者さんが3ヶ月を限度として転院していった後の患者さんの状態を見ています。当時と正反対の世界を見ているようです。

 以前「がんばらない」の本をお書きになられた鎌田實先生(元諏訪中央病院長)が、攻める医療と支える医療のバランスが大切であるとおっしゃられたことがありました。先生が意味された支える医療とは、その人のもつ人生観にあった医療を医者が示すことであったと記憶しています。わたしはこれにもう1つ、最先端の反対に位置する医療も、非常に深い意味のある医療であると実感しています。