コラム - 院長より

 

Vol.30 2005/11/15

人間的な経験をしている霊

 クリニックもお蔭様で、満4歳になりました。最近、街角のポスターで、「子供は夏が来るたびに、大人は秋を迎えるたびに、また一つなにか大切なものを身につける」という見出しを見かけました。子供の頃は、確かに夏休みがきて、毎日外で遊びプールで真っ黒に日焼けして9月に学校へ行くと、校長先生から「また皆さん、ひとまわりたくましく大きくなりましたね」と言われたことを覚えています。あれから40年ほどの年月が流れた現在、時の流れが疎ましくなるほど速く感じられ、夏の訪れよりも紅葉の美しさに目を奪われる秋こそ、歳をとることに対して憂愁にも似た、もの想いにふけるようになりました。

 最近では、抗加齢作用、アンチエイジングという言葉が広く使われ、学会までできています。人は昔から不老長寿の媚薬を求めてきましたが、現在のところ医学的には、寿命をつかさどる遺伝子時計は確実に時を刻み続けています。おそらく抗加齢作用のあるものは、この時計を少しだけ遅らせてくれるものと思います。問題は肉体的な加齢に対しての内面的成長とのバランスだと思います。肉体的に若さが保たれれば、心も若さを保つことは可能です。しかし反対に、肉体年齢を抗加齢作用で遅らせても、こころの未熟さが目立つ場合です。心と体はバランスよく歳をとることが大切だとつくづく思います。

 我々は霊的な経験をしている人間ではない。人間的な経験をしている霊なのである。T.D.チャーディンのこの言葉は、年の瀬を迎へまた一つ年を重ねることにささやかな抵抗をする、我々人間の心に静かに響きます。生かされ、生き抜くことの素晴らしさを感じ、天に感謝したいと思います。