コラム - 院長より

 

Vol.40 2006/09/15

生き抜くことの苦しさ

 新聞で、今ヒット上映中のゲド戦記の広告をみました。私はまだ映画館に行っていませんが、物語の中の主人公の言葉を通して、原作者ル・グウイン氏からのメッセージが届いたような気がしました。

死ぬことがわかっているから命は大切なんだ!
アレンが怖がってるのは死ぬことじゃないわ、
生きることを怖がっているのよ!
死んでもいいとか、永遠に死にたくないとか、
そんなのどっちでも同じだわ!
ひとつしかない命を生きるのが怖いだけよ!

 先日、私の患者さんのご家族が自殺しました。ご自身の病気、ご兄弟のご病気、認知症のお母様の介護などいくつもの苦しさをかかえておられました。私とお話をする時、いつもご自分のこと以上にご家族のことを心配され、その度に生きることのつらさ、どうして私だけがこんなに苦しまなければいけないのでしょう?と、おっしゃっておられました。

 私たちは毎日苦しさと裏腹に生きているのかもしれません。その人でなければ、本人の本当の苦しさなどは分からないと思います。人は魂を磨くためにこの世に生を受け、肉体という乗り物に魂がのっているといわれます。それぞれの環境で、それぞれの魂がいろいろの経験をするためだとしても、生身の私たちに本当に耐えれない苦しさというものが襲いかかってきたとき、どうしたらいいのでしょうか?

 私自身もその解決方法などわかりません。でも1つだけ解かるような気がします。自殺してしまえばその苦しさが解決され、苦しみから逃れられるかというと、そうではないと思います。その時の苦しい気持ち、死に向かうときの恐怖も永久に続いてしまうのではないでしょうか?

 生きて生きて、生き抜いて、苦しんで苦しんで苦しみぬいて、やがて借り物の肉体が壊れて返す時が来た時、私たちの魂は初めてこの世で学んだことの意味が分かるのしょう。ひとつしかない命を生き抜くことは、本当に怖くてつらいです。

夕闇せ~まる雲の上♪ いつ~も一羽で飛んでいる♪♪

街角から聞こえるゲド戦記のテーマソングが、私の心に優しく響きます。逝ってしまった方々のご冥福を心からお祈りします。