コラム - 院長より

 

Vol.46 2007/03/15

大学病院志向のいいこと、悪いこと

 最近、私の外来におみえになられた患者さんがこんなことをおっしゃっておられました。 「家内は具合が悪くてあちこちの病院に行きました。でもどこの病院でも原因がわからず、先日○○大学病院にいきました。その先生は、その症状でテレビにも出ておられ、わらをもつかむ気持ちで受診しました。寒い思いをしながら2時間ほど待たされて入った診察室には、医学生さんたちが5~6人いました。先生は簡単な問診をしただけで、学生さんに向って、みんなよく見ておけ、これが典型的な難病の○○○病だ!と大きな声でいい、10分後には、次の患者さんが待っていますので、と言って終わりでした。 そのくらいの診察でほんとに全てがわかってしまうのかも疑問でしたが、それ以上に家内はその先生の言い放ち方にショックを受けたようでした。案の定、それ以来家内は沢山の抗うつ剤を飲まなくてはならないほどのうつになっています。」

 医学部は我々を教育し育ててくれた学び舎です。そして大学病院には、教育以外に臨床と研究という課せられた使命があります。臨床とは、如何にいい手術、いい診断・内服治療ができるか患者さんを診ながら、新しい治療方法をあみ出す場です。大学病院では普通の病院には高価で導入が難しい高性能の診断・治療機器がそろっています。研究とは主に実験動物を使って、薬や治療手段の基礎的なデータを集めるものです。実験機器の面でも大学は、最先端のものがそろっており、有用な場となりえます。そこにいる医師は、診療と学生教育の間をぬって、クタクタになりながら研究論文をいくつも書かなくてはなりません。

 いかにいい機器があっても、大学病院は残念ながらやはり経験の浅い医師が多く、また博士号の取得のために実験・研究に主軸をおいてしまう医師が多い傾向がいなめません。しかし私はこの患者さんの話を伺って何よりも思ったことは、ハード面よりソフト面、つまり最も大切にしなければならない、そこにいる患者とそこにいる医師の心の温かさの交流が忘れられているのではないかということでした。

 風邪をひいても大学病院! つい最近まで、今もそうかもしれませんが、こんな風潮があったような気がします。我々受診する側も、大学病院の役割をよく考え、理解しておきたいと思います。