コラム - 院長より

 

Vol.66 2008/11/15

今、感じる在宅医療での疑問と実感

 毎日、在宅医療をしていますと沢山の方に会い、その中にいくつもの疑問と問題を感じます。

1) 入所施設への訪問診療のあり方について:

 施設を回った時、ここは病院ではなく自宅感覚のところなので白衣で来ないでください。また、日曜日などスタッフの手薄なときはお越しくださらないでくださいとの趣旨をわざわざmeetingを開いて告げられたことがあります。私は自宅感覚であるが故に、体調が悪い時は昼も夜もなく、曜日も関係なく在宅をすべきであり、医者が来たという緊張感を持ってもらうためにも白衣くらい羽織っても良いのではないかと思います。施設に入っておられる方は、在宅診療ではないのでしょうか? 私は施設が自宅と同じく優しい場所といううたい文句をイメージとして強く出してきている今こそ、入所しているお一人お一人を家族と同様と考えるならば、自宅と同じように在宅医療を受けられる体制を作って差し上げるべきであると思います。

2) 介護保険サービスのあり方について:

 年頃の娘さんと病気のお母様のお二人の家族(他に親戚なし)で、娘さんが全てを見切れる状態でなくても、介護保険では家族同居の場合には、たとえヘルパーなどのサービスがついても、やれることが極めて限られてしまいます。このお宅の場合など典型的であり、娘さんは片道2時間もかかるところに通勤し、病気のお母様は日中はお一人。手足がご不自由なため娘さんが帰っておみえになるまで夕食も食べず一人ぽっち。娘さんが帰ってきて夕食を作ってくれるまでお腹をすかせて待っていなければなりませんでした。ヘルパーさんに入ってもらい食事を作ってもらおうとしたところ、関係部門からは家族同居なので・・・などのサービスはできない。娘さんが帰ってからやってもらってください。実の母なのだから甘えてないできちんと母を診るべき、と冷たく言われてしまいました。実際、毎日遠くに通って遅くなる娘さんにそれができないから、娘さんが帰ってくるまでの介護を介護保険でカバーしてあげるのが、ほんとの生きた介護保険制度なのではないでしょうか?

3) 訪問看護のあり方について:

 現在患者さんは、訪問看護ステーションと契約書を交わして定期的に訪問看護を受ける制度があります。しかし、みなさんこの訪問看護ステーション制度は、週に何回ナースが訪れるという契約なので、熱が出たときだけ我々医師が、その患者さんの近隣の訪問看護ステーションに点滴をしに行ってくださいませんか?と依頼しても、連続的に定期的に訪問するという契約のこの制度下では、このような単発の点滴は受けてくれるところがないのです。結局、医師も他の患者さんの治療で手が離せない場合、その患者さんは、苦しい中、泣く泣く病院へ行かなくてはならなくなるのです。連続的に定期的に訪問する契約をしなければ、訪問看護ステーションの経営が成り立っていかないのはよくわかります。しかしもっと小回りのきく契約形態が並行してあっても良いのではないかと思います。


 ほんの断片的なことしか今回は書けませんでしたが、毎日の在宅医療現場では、医師、ナース、ケアマネ等の職種を問わず、困っていることが山積しています。山積み問題をどうにか解決していかなくてはいけませんが、“制度である”の一言で片付けられては患者さんが一番かわいそうなのではないかと思っています。とても心が痛んでいます。