コラム - 院長より

 

Vol.68 2009/1/15

道元師の言葉? 皆イライラしすぎていませんか!

 皆さん、2009年が明けました。凛とした空気の中で、この正月はいかがお過ごしでしたでしょうか? ある方はご実家で、ある方はいつものお住まいで、ある方は海外で新年をお迎えになられたことと思います。

 昨年は9月のアメリカのリーマン・ショック以降、本当に暗い話が多かったです。私のところに来てくださる方々の中にも、職がなくなってしまった、冬のボーナスがなくなりショックを受けてしまった、等々で益々体調を崩されてしまった方が多くみられました。そしてそれ以上に、人の悪口、社会の悪口が出てしまう光景が世の中でたくさん見られ、いやなニュースも多く聞かれました。本当に、皆イライラが募っていらっしゃるようでした。

正月映画の広告を見ていて驚きました。1月半ばから、鎌倉時代の一人の僧侶、道元師をテーマとした禅(Zen)という映画が始まるそうです。その解説者の言葉の中に、「時の宰相北条氏が己の権力のために悪辣非道を尽くし、それでも自己を守るために突き進んだ結果、生きる目的を見失い道元に救いを求めたそうです。その時、道元は自分の権力を全て捨て、花月水を愛でる気持ちをお持ちなさい、それであなたは気持ちが楽になり、また生きる目的が見えてきます、と言って詠んだ詞があるそうです。

「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり」

何か今のこの殺伐とした時を生きる私たちに共鳴するものがあるように思えます。 私たちは生きていかなくてはなりません。ですからただ花を見て鳥の声を聞いて月と雪を見ていては食べていけません。仕事がなかったら、体が健康でありさえすればどんな仕事だってできます。生きるために食べるためにガムシャラに働かなくてはいけません。しかし苦しくなった時、ふと立ち止まり、一息つく時間を持つこと、これが大切なのではないでしょうか? そうすれば、人や他人にきつい言葉を浴びせて、後でいやになる自分が少しでも減るのではないかと思います。一息ついて冷静になれば、投げ出さずにまた次の仕事に向かっていけると思います。

 道元を生涯、師として崇拝した松尾芭蕉もこの詞の一部を自身の俳句に引用し、かの良寛さんもその辞世の句にこの詞を織り込み、はたまた 川端康成氏もノーベル文学賞の受賞スピーチでの冒頭で、道元師のこの詞を世界に向けて発信したと聞いて、私は新春からさらに深い感銘を受けました。

 道元師が今の時代に街角に立っていたら、この世相を異様だとは思わないかもしれませんね。


初日の出 犬吠埼