コラム - 院長より

 

Vol.72 2009/5/15

迷惑をかけるとき かけられるとき

 先日、在宅診療を行っている患者さんから電話がかかり、急遽伺って診ると、全く生気がなく、暗いお部屋で一人で坐しておられました。 「先生、この腕から手が痛くて痛くて、もう我慢できない。もう死んだ方がいい! 近いうちに死にます!! ありがとうございました」と言って泣いておられました。この方は、何年も前に頸の怪我をされてから、両腕に激痛が度々はしる状態になっており、精神科にも受診を依頼しているほど、長年苦しんでこられた80歳くらいの独居の女性です。 続けておっしゃったのは「ヘルパーさんにも、先生にもみんなさんに迷惑ばかりかけて、本当に申し訳なくて、申し訳なくて・・・」と、そのあとは言葉になりませんでした。

 私はその場でいろいろなお話をしました。私は、このような思いに苦しんでおられる皆さんに申し上げたいことがあります。 周りに迷惑をかける時は、かけていいのですよ。思いっきり周りの方のご厚意に甘えてよいと思います。そして、その優しさで元気になり、逆にその周りの方たちが迷惑をかけてきた時、今度はしっかりとあなたがそれを受け止めてあげればいい。 苦しい時は迷惑をかけたっていい。死んだって楽になれるとは限りません。ず~とあちらの世界で同じ苦しみを続けなくてはならないかもしれないのです。それより、今、少しでもお互いのことを思いあって、小さくても温かい手をさしのべることをやってみましょう。黙って手を握ってあげるだけでもいいと思います。その温かさに触れると少しでも楽になれます。難しくなんかないと思います。


クリニックにかかった虹 鈴木恵美子スタッフ撮影