コラム - 院長より

 

Vol.111 2012/8/15

治すための治療と延命治療を間違えないでください!

先日、90歳位超えのご高齢者の在宅診療をしていたところ、この暑さのせいかこのところ食欲がどんどん落ちておられたので、訪問看護ステーションにお願いし、在宅での点滴を始めました。数日後、訪問したところ、ご家族から「こんなに何度も針をさすのはかわいそうだから、もう点滴はしないでください。うちの年寄りには延命治療をしないことにしています。痰を吸う器械も借りたけど、これも延命治療なのでいりません。苦しくないようにだけしていただければいいです。 高熱がでたら抗生物質かなんかで、さげてやってください。」と言われました。

私はご家族のお気持ちはわかりましたが反論しました。悪性の病気で、もう治らないというのに使うつらい抗がん剤とはちがい、脱水を補正すれば元気になれる、笑顔が戻る。食欲が戻る、それがどうして延命療法でしょうか? 延命療法とは、どう治療してもあと数日、あと数か月という命の期限が変えられないことがわかっていても行う治療を言います。また、苦しめないために痰を吸うのではないのですか? 高熱が出ないように、脱水も治さなくてはいけないし、高熱が出たらますます脱水になり、その時だけ抗生剤を使うのはそれこそおかしいのではないですか?と。

以前のコラムでも書きましたが、延命治療と治すための治療は全く意味が異なります。
天寿は誰にでも定められ、それを変えることはできません。その時が来るまで、体と魂の両方とも大切にして治療していくのが、我々に体と、まさにその中に魂を注入してくれた神の意に報いることになります。

在宅介護でお疲れになっておられるご家族のお気持ちはよくわかります。でも少しでも、そのつらさと迷いを減らせるように我々はいます。混乱の中でも、どうか延命治療と治すための治療の違いを間違えないようなさっていただきたいと切に思います。