よくわかる Dr.くどうのミニ・レクチャー

脂肪細胞の良いこと・悪いこと!

 昨秋このコーナーで内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)についてお話しました。ウエストが男性85センチ、女性90センチ以上で高血圧、高血糖、高脂血症になると、脳卒中、狭心症や心筋梗塞が発症しやすくなるということでしたね。今回は小腸などを包んでいる腸間膜に脂肪が過剰に蓄積してしまうこの内臓脂肪内の個々の脂肪細胞に目を向けてみましょう。

 脂肪細胞は、最近よく耳にする“中性脂肪”を細胞内に取り込んで膨張し、ほとんどは黄白色の“ふとった細胞”となります。今まで脂肪は活動する時にエネルギーを供給してくれる単なる貯蔵庫と考えられてきました。しかし最近、脂肪細胞は糖尿病や高血圧、摂食や性機能、免疫にまで影響を及ぼす様々なホルモンを分泌していることがわかってきました(下図)。たとえばPAI-1が過剰になると血栓ができやすく脳梗塞・心筋梗塞などをおこし、TNF-αが増えすぎると血糖を下げるインスリンの働きが弱まり糖尿病に、インターロイキンやアンギオテンシノーゲンのバランスが崩れると免疫異常や高血圧症につながります。でも良い働きもあります。超善玉ホルモンであるアデイポネクチンのお話です。これは他のものよりはるかに多く分泌されており、通常では血管内を走り回り、動脈硬化や動脈瘤をできやすくする血管内面の傷を修復してくれる働きをもっています。アデイポネクチンは内臓脂肪が増加すると減ってしまいますが、体重を一割落とすと逆に分泌量が二倍に回復します。

 昔から日本人は欧米人に比べ、少量の食事からエネルギーを脂肪細胞に貯めることができる遺伝子をもっていました。しかしこれは戦後直後の食べ物のない時代までは良かったのですが、飽食の時代といわれる現代ではかえって体によくないのかもしれません。余計な栄養をとらない、これが本当は一番体によい逆説的な栄養療法なのでしょうか?!

図1